──貴方に伝えたかった、たった一言。

「ごめ……ん……あかり……」

「いいんだよ」

幼い子どものように泣く真希を私は強く、優しく抱いた。

         ♢

そのまま真希は「一度家に帰ってから塾に行くね」と言って、走って行ってしまった。

「これで一件落着だといいんだけど……」

真希の走って行った道を眺めらがら呟く。

「水野さんはもう大丈夫だよ」

ふいに隣から声がして、そちらに頭を回すと私服姿の星がいた。

「だと……いいんだけど……」

視線を戻して、俯きながら言った。

「でも……こうして水野さんが元気に走って行けたのは、茜里が勇気を出して、一歩を踏み出したからだよ」

私はもう一度、次はしっかりと星の目を見た。

「茜里が頑張ったから、今の水野さんがいるんだ」

星は屁理屈のない笑顔で言ってくれた。

それがどれほど綺麗で、優しくて、暖かくて、嬉しい言葉なのだろうか。

私は何とも言えない感情になっていた。