──貴方に伝えたかった、たった一言。

「……せ……い……」

涙が自分の目から溢れそうになったのを、両手で拭った。

「……なんで……?」と私は思わず訊いた。

「たまたま雨が降って、綺麗で散歩してたら、土砂降りの中、傘も差さずに座ってる女の子が居たから来ただけ…」

そう言いながら私の横に座った。

「…ズボンが雨の付いた砂で汚れちゃうよ…」と私は小さく言った。

「それは茜里も一緒だろ」とすぐに言ってくれた。

「ここに来たのは水野さんのことがあったからだろ?」と首を傾げて星は訊いてきた。

「うん…」と私は頷いて、俯いた。

「私があんなこと言っちゃったから……あんな酷いことしたから……真希は……」

涙が滲んだ声は星に聞こえたかどうかは全く分からなかった。

「……もう……一生このままなのかなぁ……」

泣いてばかりいる私を置いて、傘はそのまま私に差したまま、星は雨に濡れていくにも関わらず、海の波打ち際に立った。

「茜里」と私の名前を呼んだ。

もう声が出ない……。

土砂降りの雨のうるさい音と荒い波の音しか聞こえなかった。