──貴方に伝えたかった、たった一言。

「急に走るからびっくりしたよ~」と真希が少し焦った表情を見せた。

私はとっさに「ごめんごめん」と笑って言った。

「ありがとう。茜里」と真希が言った。

私も「こちらこそありがとう。真希」と言った。

やっぱり持つべきは友だ。

「星もありがとう」と私は真希の横できょとんとしている星に言った。

自分でも下の名前で呼ぶのは慣れてないからたくさん言って慣れないといけないんだ。

星は少し目を逸らした後、すぐに目を合わせて

「こっちのセリフだよ。ありがとう。茜里」

穏やかな太陽みたいに微笑んで星は言った。

「さ!帰ろっか!」と思いっきり体を回して、「あそこの電柱まで競争!」と言って一番に走る。

「あっ!まって~!茜里~!」と真希の声が後ろから聞こえた。

「ちょ…あ…茜里!」と星の声も聞こえた。

私は幸せ者だ──

そう思った。

いや、そう思えたのだ。

私はこれからもこの幸せを大事に生きて行くんだ。

三人で競争して、三人同時に電柱にたどり着いた。