──貴方に伝えたかった、たった一言。

「あ!いたいた。天野く~ん!」

私の声に気づいてゆっくりと天野くんが振り向いてくれた。

ユニフォーム姿の天野くん……。

ものすごくかっこいい……。

本当は走っては行けない廊下をバタバタと走って行く。

「廊下。走ったらためだよ」と天野くんは微笑んで軽く叱った。

その笑みに見とれてしまって、何を話せばいいからからなくなった。

「樋目野?」

天野くんが首を傾げて不思議そうに名前を呼んだ。

その声に、はっと目が覚める。

「ご、ごめん。ぼーっとしゃってて…」とあり来たりな嘘をついて「そう?」と天野くんが呟いた。

「試合。頑張ってね」

「うん。頑張るよ」

今はこれだけでいい。

もっと話したいけど……時間が時間だし……。

そう言って私は天野くんに背を向け、ゆっくりと廊下を歩く。

「……樋目野!」と天野くんが少し大きな声で名前を呼んだので、思わず振り向いてしまった。

私は唖然としてしまって声が出なかった。

「もし……もしシュート入れたさ……」

シュートを入れたらどうするのだろう……。

疑問に思っている間に天野くんが口を開いた。