──貴方に伝えたかった、たった一言。

「久しぶりに勝負しようぜ?ハーフコートで最初に点入れた方の勝ちにしようぜ?」

天野くんは「いいよ」と短く、鋭くで言った。

「真希。離れとこ」と言って真希の手を握る。

「う…うん」

         ♢

「先手はお前でいいよ~」と舐め腐った言葉を天野くんを見ずに、うちだは言った。

天野くんは水筒をベンチにゆっくり置いて、コートに目を向けた。

行くんだ。と反射的わかった。

「あ…天野くん!」と思わず呼び止めてしまった。

天野くんがこちらを振り向く。

「が…頑張ってね…!」

直視出来なくて瞼を閉じる。

五秒くらい経ってゆっくり目を開けると、私は右拳を前に出していた。

何してんだ私…!と、ふと思って拳を引き戻そうとしたその時…。

拳に何か当たって自分のグーになっている手を見ると、天野くんの左拳が私の右拳の先端に当たっていた。

「樋目野。ありがと、頑張る」と微笑んでコートに走って行った。