──貴方に伝えたかった、たった一言。

「今のとこどう?平気?」

右手に持つランタンをゆらゆら音をたてながら、天野くんが私に訊いてきた。

「うん…平気…」

呟くように私は言った。

天野くんの手を右手で握ったままもう片方の手で涙を何とか拭き取る。

こんなダサいところ…見られたくなかったんだけどな…

闇に包まれた公園を二人っきり手を繋いで歩く。

こんな夜中に何するんだろう。

ふとそう考えた時、頭がくらっとした。

体が少しよろめいて天野くんに少しぶつかった。

「あ…ごめん…」と私は反射的目をすこし開けて言っていた。

心臓がとくとくと鼓動を早く鳴らしてくる。

「全然。大丈夫だよ」

ランタンの光の中で天野くんは微笑んだ。

綺麗な笑顔だった。とてつもないくらい、穏やかな笑顔だった。

私はずっと目を合わせていたら、心臓が止まってしまいそうだったので、前を向いて目を閉じた。

「しんどいようだったら、俺に持たれる?」

私の脳内が三秒フリーズした。

「いやいや?!そんなの天野くんに悪いよ?!」

私は天野くんの手を離し、一歩後ずさりし、目を開けたかったが、開けないようにして胸の前で両手をふるふると振った。