──貴方に伝えたかった、たった一言。

七月七日。

十一時になった。

外に出る支度をして、ドアをゆっくりと開ける。

お母さんが寝ている事を確認して、足音を出来るだけ立てずに、一階まで行き、玄関をゆっくりと出た。

         ♢

「やっほ」

外に出たら天野くんは右手にランタンを持っていて、片方の手をスッと上げで言った。

この時をどれだけ待ち望んでいたことか……。

「樋目野…お願いなんだけど…」

「何?」と天野くんに短く言うと…。

「目…閉じてほしい…」

目?なんでだろう…散歩なのに……?

言われるがまま私は目を閉じ、「このまんま歩くから手、出して」と言われ手をスッと出した。

ゆっくり…目を閉じたまま、手を繋いでいる天野くんに全てを託して進む。

天野くんと手……繋いでる……。

気持ちを、紛らわせるために「まだ~?」と私が言うと。

「まだだよ」と答えてくれた。

寒い……夏なのに夜は凄く寒い…。

私はもう少しだけ、手の力を強めた。

「まだなの~?」

しばらく経って天野くんに言うと。

「まーだ」と呆れたように言ってきた。

もうしばらく経って、天野くんが口を開いた。

「着いた」

「どこ?」と短く言う。

「いつもの公園」と一言だけ言った。

行き先は公園なのになぜ目を閉じないといけないのだろう。

少し歩き…天野くんは急に立ち止まった。

「ちょっと待ってて。目、開けないでよ」と天野くんが言いながら私をベンチらしきところに座らせる。

「わかったわかった」と笑いながら言うと天野くんはどこかに立ち去って行った。

しかし…ずっと暗闇だと凄く怖い。

暗いところが苦手で小学校の頃『ビビり女』といじめられて、もっと暗いのが怖くなった。