──貴方に伝えたかった、たった一言。

「おーうまいうまい!」

天野くんは真希に向かってそう言った。

私が言えた事ではないが、さっきのぎこちなさは消えていて、綺麗なドリブルだった。

「真希すごい!私より何倍、何十倍…いや…何百倍もすごいよ!」

私は手をパチパチと鳴らしながら真希に言った。

「そのままゆっくり動いてみようか」

「う…うん」と真希は言って、ドリブルをしながらゆっくり動き出す。

ほんとに凄い。真希がドリブルしながら歩いている。

その後も日が暮れるまで、私達はバスケをした。

         ♢

「あ…もう五時半か…」

私達がドリブルの練習をしている時に、天野くんは公園に設置されている時計を見ながら呟いた。

「今日はここらで終わりにしようか」

天野くんはこっちを振り向いて私達に言った。

「そうだね。そろそろ終わりにしよう」と言いながら私達はドリブルを止めた。

「あ!私今日六時半から塾だった!ごめん!すぐ帰るね!…あ!バスケ教えてくれてありがとう!ばいばい!」

真希はめっちゃ早口で荷物をまとめ、走り去った。

「また明日ー!」と言いながら手を大きく振る。

それに気づいたのか、真希も足を止めて私の方に振り向いて手を振ってくれた。