──貴方に伝えたかった、たった一言。

「あったり前じゃん!天野くんだけに任せられないよ!私も一緒にやる!」

二人が目を丸くしている間に私はぷいっと後ろを振り向き、バックを持って公衆トイレに向かった。

         ♢

公衆トイレから出てきて、バスケットコートの方に走る。

「おまたせー!」と大声を出しながら二人に言う。

「お!きたきた」

天野くんは制服の下に体操服を着ていたので、制服を脱ぐだけだったらしい。

「まずは、ドリブルからやってみようか」

天野くんはボールを手渡しで真希に渡した。

真希は手のひらをパーにしてボールを地面に叩きつけ、跳ね返って来たボールをまた叩きつける。

「おっけ~。一旦ストップ」と天野くんは言って、真希は動きを止める。

「ボールは待つんじゃなくて…迎えに行くんだ」

天野くんは説明しながらお手本をする。

「こういう感じに…跳ね返って来たボールを待つんじゃなくて、迎えに行く。ボールと一体化する感じでドリブルするんだ」

「なるほど…」

両手で掴んでいるボールをじっと見つめながら真希は言った。

そして真希は言われた通りにドリブルを始めた。