──貴方に伝えたかった、たった一言。

この人は誰だろう……。

名前が知りたい……。

「よし…行こ…」と彼は呟いて靴箱に向かって歩く。

あ!…待って!…そう言おうと思った時には、彼の姿は、人混みに消えて行った…。

彼はとてもクールだ。

私はゆっくり靴箱に歩み、スリッパに履き替え、階段を登って行った。

私も人混みを避けて行き、階段を登った先の廊下をゆっくり歩く。

「二組…二組…」と小さく何度も呟きながら探す。

あった…一年二組だ。

ドアを開けて、黒板に貼られている席表とにらめっこして、自分の席を探す。

お!窓際の一番後ろだ!やった!心の中でよろこび、鼻歌を歌いながら席まで行く。

「あっかり!」

どこからか声がした。

きょろきょろ回りを見渡すが誰もいない。

「うしろだよっ!」と急に背中に重力を感じた。

後ろにグイッと顔を向ける。

「あ!」と声をあげてしまった。