──貴方に伝えたかった、たった一言。

「…とは言ったものの…どうしよう…」

校門を出ながら一点の曇りない青空を見上げる。

私に出来る事ってなんだろう……バスケなんて、前の授業でやったのが初めてだし…。

「樋目野さーん!」

真希の手助けになれる事を考えていたら、後ろの方から私を呼ぶ声がした。

ゆっくり振り向くと、肩から提げている鞄をぷらんぷらんと揺らして、息を切らしていた天野くんがいた。

「天野くん?どうしたの?そんな急いで」

息を荒くしている天野くんにきょとんとした顔で訊く。

「今日さ…たまたま廊下歩いてたら…樋目野さんと、仲のいい水野さんって子と話してたでしょ?」

「あ~真希のこと?真希がどうしたの?」

息を整えて…ゆっくり天野くんは顔を上げた。

「ちょっとだけ内容聞こえちゃって…困り事が…あるかなって…思って…」