──貴方に伝えたかった、たった一言。

海の見えるベンチに二人で座って海を眺めた。

海の波の音と鳥の囀り（さえずり）が聞こえて来た。

茜色に輝く太陽と海を二人で眺める。

横目で天野くんを見る。

とても…悔しそうだ…。

「神様なんて大っ嫌い！あと一本だよ？一本くらいおまけしてくれてもよくない？九本入ったんだからよくない？」

…と場を和ませようとしたが…。

「約束は…十回だろ…」と俯いたまま天野くんは行った。

そうですよねぇ…。

本当に惜しかった。

「ちょっと海の近くまで行かない？」

そう言うと、天野くんは顔を上げ…「うん…」と言ってくれた。

私たちはベンチから立ち上がり、海の近くまでコンクリートの地面を歩いて行った。

　　　　　　　　　♢

海の波の音はいつもうるさいはずなのに、今日はとても静かだ。

そんなことを考えながら私たちは海と青空を見ながらそのサラサラ砂の上を立ち尽くした。

「ひ…樋目野さん！」

少し遠いところから天野くんが私の名前を呼ぶ。