──貴方に伝えたかった、たった一言。

だがボールはネットに少しかすれただけで、リングをくぐることは無かった。

「…頑張った方だよ」

そう言いながら天野くんはこっちに来た。

「そう…だよね…私…頑張ったよね…」

そう小さく私は言った。

「…じゃあ…次は天野くんの番!」と笑みを浮かべて言った。

「は?!話とちが…」

「次は!天野くんが自分と奇跡を信じる時間だよ」 

そう言うと、天野くんの目に光が灯ったように見えた。

そして、天野くんは何も言わずボールを手に取った。

そして、ボールをゴールに一投一投投げて行く。

一本目、二本目、三本目、四本目、五本目、あっという間に私の記録を越え、半分に到達。

六本目、七本目、八本目、後二本まで来た。

天野くんと私の体に緊張が全身を走る。

天野くんは深呼吸をしてボールを放った。

ボールは綺麗にリングをくぐった。

よし!…九本目!

天野くんはボールを手に取り、もう一度…。

次はもっと深い深呼吸をした。

がんばれ…がんばれ…。

ゴールが入るように祈り続けた。

そして天野くんはボールを放った。