──貴方に伝えたかった、たった一言。

「でも…となる試合の時…天野の右膝は重症を負いました」

岡野さんの表情は少し、暗くなった。

「たぶん…いや…今でも後遺症としてその傷は残っているでしょうね。天野に『バスケをまだやりたいか』と聞いても天野は『バスケなんて高校に上がってやらない』と言っていましたから」

そんな…大好きなバスケが辞めちゃうなんて…。

でも…さっきバスケをしていたような…。

「だから、天野のことをよろしくお願いします」

そう言って、岡野さんは深く頭を下げた。

「そんなそんな！頭を上げてください！」

そう言うと岡野さんは頭をゆっくり上げた。

「伝えておきます。ありがとうございました！」

そう言って頭を下げて勢いよく上げてそのまま校門を勢いよく出た。

　　　　　　　　　♢

しばらく走った後、スピードを緩めて歩いた。

天野くんは右膝を怪我して、バスケを辞めたんだ。

でも…なんでさっき…バスケしてたんだろう…。

高校上がってやらないって言ってたのに…。

そんな疑問を感じながら私は家に帰った。