──貴方に伝えたかった、たった一言。

「天野が話してないなら、私からは何もいえません」と返ってきた。

「何でですか?!」

思わず大きな声を出してしまった。

「天野が話さないってことは、話したくないのだろ。だから俺からは何もいえません」

「そう…ですか…」

あまりにも正論すぎて、頭が上がらなかった。

「でも…友達なら、一つだけ伝えといて下さい」

私は恐る恐る顔を上げる。

「右膝には…気をつけろ…って」

右膝…?

「あいつは良い選手でしたよ。ドリブル精度もシュート能力も、中学生とは思えないほどうまかったです。高校生のチームにも臆する事なく、立ち向かい、勝って行きました」

ん?この人、’’話さない’’って言った割にはペラペラと喋ってない?

そんな事を思いながら岡野さんの話を聞く。