──貴方に伝えたかった、たった一言。

音が聞こえたのは体育館。

そろりとドアから体育館の中を覗く。

「え?」と思わず呟いた。

天野くんがいる。

上着を脱いで、白いカッターシャツを腕まくりした、天野くんの姿があった。

「はぁ…はぁ…」

辺りにはたくさんのバスケットボールが転がっていた。

きっと…たくさん練習していたのだろう。

「俺…何でこんなに…」

天野くんは何かを言いかけてその場に勢いよく右膝を立てて座りこんだ。

「…っ!天野くん!」

私はスリッパを脱ぎ捨て、天野くんの方に走ってしゃがんだ。

「は?なんで…」

「だ…大丈夫?!どこか痛い処あるの?」

「いい…大丈夫たから…今日は帰って…」

天野くんは歪んだ笑みを浮かべた。

「で…でも…」

「いいから!」

大きな声にびっくりしてら私は手を少し引いた。

「…関係ないだろ…」

これだから私は…。

「ご…ごめん…」

そう言って私は体育館を出て行った。