──貴方に伝えたかった、たった一言。

「危ない危ない……約束に遅れるところだった…」

海辺について、私は大きな彼のリュックを下ろして、望遠鏡を取り出した。

最初の方は、望遠鏡の使い方とかよくわからなかったけど、今となったら、全然出来るようになった。

「もう八年か……」

彼が星の川の向こう側に行ってから、八年も経ったのか……。

「ま!思い出したら泣いちゃうから、やろっか!天体観測!」

独り言ではない……。

彼に向けて、私は喋っているのだ。

私は眼鏡を外して、望遠鏡を覗く。

綺麗なベガだ……。

「相変わらず綺麗だよね……」

次は角度を変えて、アルタイルの方に向ける。

「七月七日になったら、アルタイルはいつもより輝いて見えるんだよな……」

彼が見てるってことなのかな……。