──貴方に伝えたかった、たった一言。

「うん!いい絵が出来た!あとは十一時まで待つだけだけど……お腹空いた……」

今は午後七時。

真っ暗になるまえに、ギリギリで仕上がった。

「どこかで腹ごしらえを……あ…!」

あの店って確か……。

急いで片付けを済ませ、その店まで走った。

         ♢

「いらっしゃいま……あ!」

「やっほー!元気にしてますか?」

軽く手を振りながら店内に入った。

「誰もいないですね…」と辺りを見渡しながらカウンターに座った。

「もうすぐ閉店だからよ」と教えてくれた。

「しかし、お久しぶりです!叶(かな)さん!まさかほんとにいるとは知らず……隣町のショッピングモールの店はどうなったんですか?」

「あぁ……ショッピングモールに新しいうどん屋が出来て、あっちの方が評判が良いからって、みんな行っちまったよ」

嫌なことを掘り返してしまって、申し訳ない気持ちになった……。

「すみません……また悪い癖で……」と謝ると。

「いいのいいの!こっちに来てからお客さんがたくさん来るようになってさ!最初っからこっちで営業しとけば良かったのに」と高笑いをしてから叶さんは言った。

叶さんは二十代後半でもう少しで三十を迎える、私にとってお姉さん感が強い人だ。