──貴方に伝えたかった、たった一言。

「綺麗だね……」

いつ来ても、いつ見ても、ここの夕焼けと海は綺麗だった。

「他に人もいないし、絵でも描こっか!」

この辺では七月七日には七夕祭りって言うのがやっていて、この近くでやってないから、人が少ないのだ。

リュックの中から道具をたくさん出して、ブルーシートを敷いて、キャンバスをキャンバススタンドに置いて、絵を描いて行く。

「ここで一緒に、絵描いたよね」とキャンバスに風景を描きながら喋る。

「天体観測はもう少し時間が経ったらしようね」

この声が届いていると信じて、私はずっと貴方に喋りかける。

「私が言った’’奇跡’’を信じてくれて、すっごく嬉しかったよ」

彼の笑顔をもう一度見たい……なんて言ったら悲しくなってしまうから言わないよ……。

「私ね?貴方の絵の凄さを学校で特別授業見たいな感じで、子供たちに教えたりしてるんだよ?」

出来るだけたくさんの地域に行って、貴方のことと、貴方の絵のすごさを語り、子供たちに教えている。

貴方の絵から、私の絵は生まれている。

貴方がなかったら、私の絵は生まれてなかった。

「貴方に認められるぐらい……凄い絵を……私は描けるようになったかなぁ…」

空を見上げる。

まだほんの少ししか星たちが見えない。

視線を戻して、私はそのまま貴方に喋りながら絵を描き続けた。