──貴方に伝えたかった、たった一言。

「この絵は?」

星が連れて来てくれたのはたった一枚の絵しかない、不思議な部屋。

この絵には高校の名前も、描いた人の名前すらもなかった。

作品名「あの海の光の蘇り」

「これが全国美術展に展示される作品」

ふいに星がそう呟いた。

何というか……。

あの時と同じだった。

あの時……星にもう一度、バスケへの道を開いた……あの時見た夕日に似てる。

いや……似てるんじゃない……。

それそのものだ。

もしかしてこれって……。

「星が……描いたの……?」

思わずその絵に手を伸ばしてしまう。

ガラスのせいで直接触ることは出来なかったけど、見ているだけで心地よかった。

「そう……俺が描いたんだ」

星がゆっくりと私の隣に来てくれた。

「あの景色が、あの時の茜里が、忘れられないんだ。眩しくて、綺麗で、奇跡を超えるような輝きだったんだ」

星から見て、あの時の私はそんなに輝いていたのだろうか……。

「このまま俺の中で消えてしまうくらいなら、せめて絵に残そうって思って、描いてみたんだ」

星も片手でガラスにそっと触れる。

「消えたりなんかしないよ」

私はガラスから手を離し、そのまま星の手に、自分の手を重ねた。

「そんなに綺麗な輝きなら、消えることなんてないよ」

私はそっと微笑んで彼に言った。

「そうだね……」

私たちはしばらくそのまま、絵の感想を伝えあった。