──貴方に伝えたかった、たった一言。

「あ……」

あまりに感動し過ぎて、少し大きな声を出してしまった。

「気をつけてね」と星が微笑んで叱った。

「はい……すみませんでした……」

絵って言うのはすごい。

その作った人の意思が具現化されたように伝わってくる。

たった一枚の絵に……。

たくさんの思いがこもっているんだ……。

それがどれだけ凄くて、素敵で、美しくて描いた本人までは及ばないが、見ている人にだって、ちょっとでも伝わってくる。

私もこんな絵が描いてみたい……。

私もこんな絵を作ってみたい……。

たくさんの絵たちを見ているだけで『描いてみたい』という思いが、私の中で生まれた瞬間だった。

「茜里」

呼ばれた方に顔を向ける。

「どうしたの星」

いつものように星が『茜里』と呼んでくれる。

それだけでも十分嬉しかった。

「来て欲しいところがあるんだ。来てくれる?」といつもの穏やかな笑みを、星は見せた。

何も考えず「いいよ」と笑って星に言った。

そして、静かな世界と、たくさんの意思が灯った不思議な部屋を、二人っきりで歩いて行った。