──貴方に伝えたかった、たった一言。

電車内は休日なのに、ほとんど誰もいなかった。

私たちはみんなで座り、楽しく談笑した。

私の右隣は星。左隣は真希で、その奥が内田だ。

内田はあの時以来、嫌みや悪口など、ほとんどなくなって、随分話しやすくなった。

「なぁ茜里」

急に名前を呼ばれて、びっくりした反応を消すように、「なに?」と笑って訊いた。

「茜里って、絵描くの好き?」と首を傾げて星は訊いてきた。

「う~ん……苦手だけど、好きではあるよ」

昔から絵は描くのは苦手だけど、描いてるだけで楽しい気分になれるから好きなのだ。

「そっか。なら今日誘って良かったよ」

星は微笑んで言った。

……あれ?そういえば……。

「星。この荷物には何が入ってるの?」と星の足下にある大きなリュックが気になった。

「あぁ…これは後で使うんだ」とリュックをポンポンと優しく叩いて答えてくれた。

「へ~……後で……」

いつどこで、何に使うのかが気になったが、深掘りはしない。

だって、星は絶対教えてくれるから。

私たちは電車に身を任せ、目的地に着くまで、たくさん喋った。