「ちょっ、待ってください、リュー!」
「待てない」

 寝室に入るなり押し倒され、その金の瞳が熱を帯びていることに気付いて私は慌てた。


 ――あれから、『氷の国』と『花の王国』にふたりの女王様を送り届け、結局私たちが『竜の城』に戻れたのは翌日の明け方近くで。
 そんな私たちをエントランスで待ち受けていたのは、真のラスボスかと見間違うほど怒りのオーラを漂わせたセレストさんだった。
 そういえばリューは書き置きだけを残してお城を出てきたのだったと思い出し、覚悟を決めた私たちだったけれど。

「竜帝陛下、コハル様、ご無事の帰還何よりでございます」

 そう頭を下げられ逆に戸惑ってしまった。
 セレストさん曰く、昨夜エルが城を訪れ状況をざっくりと伝えてくれたのだそうで。

「しかしながら、一番大事な報告はおふたりの口からとのことでした」

 緊張感を漂わせたセレストさんを前に私たちは顔を見合わせた。
 そして、リューは私を引き寄せセレストさんにしっかりと報告した。

「コハルが子を身籠った」

 セレストさんは眼鏡の向こうの青い目を大きくし、その後で「おめでとうございます」と言ってくれた。
 その目が少しだけ潤んで見えたのは、私の気のせいだったろうか。