◇
ヒナと過ごせて、色々話が出来たクリスマスを経ての翌日。
…羽純にあれだけ悪態ついた以上、友香里と話しておかないとまたヒナに接触しそう。
そう考えて、友香里を大学近くのカフェに呼び出した。敦弘も一緒に。
敦弘は普段から、何かと冷静に客観的に話を聞いてくれて色々言ってくれるから。
一緒に話を聞いてもらった方が、俺も冷静に話ができるって思った。
「やっほー!あれ?羽純は?まだ?」
「俺は呼んでない。」
「え?何で?私、ヒロが誘ってるのかと思って、もうすぐ着くよってさっきメッセージしちゃったよ」
「そうなんだ。まあ…羽純はどっちでも良いよ。今日は友香里と話したくて連絡したから。」
「えー?何?何?羽純を差し置いて愛の告白だったら困るなあ〜」
陽気にカラカラと笑う友香里に、ふうとため息をつく。
そんな俺の様子に、隣に座ってた敦弘が苦笑いしながら、「とりあえず何か頼めば」って友香里にメニューを差し出した。
カフェオレとチーズケーキを店員に頼んだあと、俺の方に「それで?」と陽気に向き直る友香里。その様子を見ながら、自分のコーヒーを一口飲む。
「…友香里さ、夏休みの終わり頃にヒナと会った…と言うより、待ち伏せして、俺と羽純が二人で免許合宿に行ってるって話したんだってね。」
俺の言葉に、「はっ?」と声を出した敦弘の眉間に皺が寄る。
当の本人は、「あー…うん、あったね、そんな事」と、特に動揺もせずに水を飲む。
その様子に、さらに敦弘の顔が険しくなって、俺が口を開く前に、口を開いた。
「友香里…何してんの?つか、何でそんな事したんだよ。」
「えー?だって、内緒はまずいでしょ。ヒナちゃん可哀想じゃん。後から知るよりも、その方が良いって思ったんだよ。」
全く悪びれた様子もなく、むしろ良いことをしたでしょ位の感じだな…これ。
笑顔もなく、ふうとため息をついた俺の様子に友香里もため息をついた。
「…ヒロ、いい加減、ヒナちゃんを手放したら?“二兎追う者は一兎も得ず”だと思うけど。」
「……は?」
「可哀想だと思わないわけ?羽純が。」
羽純が…可哀想?
「だって、あれだけ羽純の事気にかけてて、優しくしておいて、”でも好きじゃありません、友達です”ってさ。何言ってんのって感じ。」
「や、だってさ…羽純は色々困ってることが多い…」
「別に見守ってできるまで待っててあげたって良いじゃん、友達なら。なのにヒロはすぐに羽純にちょっかい出してさ。あれじゃあ、やられてる方は好きになってもおかしくないでしょ。というか、ヒロだって周りから見れば羽純が好きなんだろうなって思われてもおかしくないと思うけど。」
友香里が敦弘の方に同意を求めて目を向けると、今度は敦弘が呆れた様にため息を出した。
「…友香里の話は一理ある。俺もそこは一回確認してみたかった。ヒロってさ、羽純に対してだけ、その…なんつーか、否定しないし、すぐちょっかい出して楽しそうにしてるって自分で自覚してんの?」
敦弘の言葉に、思わずフリーズ。
俺が…羽純にちょっかい出して楽しそうに…?
や、まあ…羽純と話してて楽しいとか面白いって思うことは多いけど。
それは、敦弘や友香里と話していても抱く感情だし…。
首を捻り考え出した俺の様子に、敦弘は友香里を見て、それに友香里が肩を少しすくめてみせた。
「だから言ってんじゃん。ヒロ自身が気がついてないだけって。だからうちらは思うんだよ。羽純が好きなのに、ヒナちゃんてフィルターがかかるから、目の前がちゃんと見えてないって。」
「ごめん、ヒロ。その事に関しては、ヒロももう少し考えた方が良いって思うわ、俺も。」
「そうだよ!ちゃんと考えて羽純を好きだって自覚してあげなきゃ、可哀想じゃん羽純が。このままじゃ宙ぶらりんでさ。いい加減はっきりしなよ!」
俺の、羽純に対する態度や言動…そんなふうに見られてたんだ。
ただ、“友達”って認識で、親しくしていたつもりが…。
“相沢君がモテるのは知ってる。だけど、山本さんの彼氏として、行動して欲しかった”
“相沢君は?彼氏としてどうすべきだと思う?”
西山さんの言葉が脳裏に浮かび、黙ったまま、ふうと息を吐いてから一口コーヒーを飲む。
やけにその味が苦い気がした。
そんな俺を見ながら、友香里がチーズケーキを頬張りカフェオレを一口のむ。
「幼馴染なんて、厄介なだけだねー仲良しだと。」
その一言に、ぴくりと俺の手が反応して、マグカップが揺れた。
幼馴染で仲が昔から良かったから…フィルターがかかってる?
本当は、別にヒナを好きじゃないってこと?
『ヒロのヒナちゃんに対する『好き』は、幼馴染って関係で麻痺してるだけだよ!恋愛じゃないでしょ?』
羽純に言われた言葉を思い出し、今一度考える。
「………。」
「ヒロ?」
あまりにも喋らなくなった俺に、敦弘が心配して、横から俺を覗き込んだ。
それに、「ああ、ごめん」と苦笑いして返す。
…マジで、俺最低だったわ。ヒナに対しても羽純に対しても。
「…友香里の言うとおりかも。はっきりさせるわ、この際。羽純とも話すよ。」
「おっ!わかってくれて嬉しい!」
「けど、友香里の思ってるのとは真逆の結論。ヒナはさ…フィルターとかそういう次元じゃないっつーかね…。」
「え…?」
「や…うん。ちょっと俺話になって申し訳ないんだけど…聞いてもらった方が理解して貰えるって思うから…この際話すわ。」
ヒナへの好意について、誰かに詳しく話をしなきゃいけなくなるとは思わなかった。
ヒナ自身も含めて、絶対誰にも言いたくない事だからな…。
でも今はそんな事言ってる場合じゃない。
ヒナを守る為に俺が出来る事…というか、友香里に納得してもらうには話すべき事だって思うから。
ふうと一度息を吐いて、コーヒーを一口また飲んでからカップを静かに置く。
それから、友香里と敦弘の顔を見ながら、また苦笑いした。
「…ドン引き覚悟で話す。」
「な、何…?」
友香里が真剣な眼差して、眉間に皺を寄せて若干俺の方に前のめり。
敦弘も、持たれていた体を起こし姿勢を正す。
「…俺さ、ヒナへの恋愛感情を自覚したの、小5か小6の時位なんだよね…まあ、それも多分だけど。生まれた時からめちゃくちゃ好きだったし。」
「そう…なんだ。」
「そう、それで…そっからずっと好き。でも中学生が小学生好きって言うのが恥ずかしいって思って、ずっと隠しててさ。でも会いたくて夕方とか、土日とか…彼女が居てもヒナに会いたくて、彼女よりもヒナ優先で会いに行ってた。」
二人とも、「何それ」とやっぱり引き気味。
まあ…俺の事見る目が変わっても仕方ないよな、こればっかりは。
ヒナが嫌がってたら、完全ストーカー。
それでなくても、傍目から見たら、子供に執着してるやべー奴って思うだろうし。
「高校入っても彼女ほったらかしでヒナのことばっか気にしてるから、すぐフラれて。」
「当たり前じゃん!」
「だよね、だからさ…高校の後半位からは、もういいや、口説ける年齢まで待とうって決めて、ヒナの高校卒業を待ってるつもりだったんだよね。」
「じゃあ…何で…」
「や…まあ、ほらヒナも成長していくわけでさ。俺があまりにも何もアクションを起こさなかったからじゃない?出会いを求めて他のヤツに行きそうになってさ…慌てて阻止したっつーね…何ともカッコ悪い話。」
「はあ?!何それ!じゃあ、ヒナちゃんの出会いのチャンスもヒロが奪ったってこと?!」
友香里が、「あんた何やってんのよ!」と目を三角にしてる…けど。
「…そこ?」
「はあっ?!自覚なし?!
確かに、中学生が小学生好きとかレアな話だけどさ…そこまでは、まあ、可愛い初恋って感じだし、ヒロはそうだったんだねで終わる話だよ。」
「でもさ」と水をコクリと飲むとまた俺をキッと睨む友香里。
「それ以外のヒロの行為は、自分の手元に置いておきたいから、ずっと監視してたって事じゃん。それでヒナちゃんが成長していく過程で出会いのチャンスがあったら、それを潰して囲った。
そんな環境にして、ヒナちゃんに選択権を全く与えなかったのはヒロってことでしょ?それなのに自分は、羽純にデレデレしてたわけ?!ヒクレベルの話じゃないんだけど!最悪!最低!」
「友香里…落ち着けって。」
敦弘が見かね、友香里を嗜めようと割って入ったけれど、友香里の勢いは止まらない。
「まあ、幼馴染で親しい女の子だから、フラフラするのが心配だったのかもしれないけどさ…ヒロがやってる事はただの過保護だと思うけど。ヒナちゃんを守るとか大事にしてるってことじゃなくて、ただ単に、自分の見栄を守りながら囲いたいがための自己満足じゃん。
ヒナちゃんの事、ちゃんと人として見てるわけ?趣味で愛でてる物じゃないんだよ、ヒナちゃんは!
それに、歴代彼女にも失礼過ぎ!バカにするのもいい加減にしなよ!」
すげー…辛辣だけど。
めちゃくちゃその通りって、今は自覚ある。
というか、自覚があるから話をしようと思ったんだから。
敦弘が言われ放題の俺の肩をポンと叩いたあと、また友香里を「だから、落ち着けって」と嗜める。
「友香里、言い過ぎ。ヒートアップし過ぎ。それにさ、ヒロは自分が悪い印象になるように話しすぎてない?もしかして、ヒナちゃんを好きだって事が恥ずかしくて、他の子好きになろうと、試行錯誤したんじゃねーの?さっきのリアクションだと。」
「それは…うん、その通り。」
「だとしたら、まあ…仕方ないっちゃ仕方ないよな。やっぱ小学生と中学生とか、中学生と高校生とかって…恋愛に関しては何となく違和感つーかさ。あるもんじゃん。周りにバレないようにしたいって気持ちに俺もなるかも。
で、利用しようって言うんじゃなく、他に目を向けてみたら、この苦しさから逃れられるかもって、“努力した”ってことじゃないの?」
「…で、結果結局ヒナちゃんから離れられなくて失敗ってこと?」
敦弘の穏やかな口調に、友香里の温度が少しだけ下がったらしい。
唇を尖らせて、目を細めてはいるけれどふうと一息吐いて、発する声色が少し冷静になった。
「まあ…うん、要約するとそんなとこ…かな。」
「なるほどね。確かにそれは、好きの年季がすごいのは認める。
じゃあ、羽純に対してそう言う感情が一切ないままに、あれだけイチャイチャしてたんだ。」
そこ…なんだよな。
舞にもその点は指摘された。
“もう少し、友達との距離感考えたら?”って。
それは、多分…というか、西山さんの“ヒナの彼氏としてどうするか”って所につながる事なんだろうけど…。
「…そんなに俺、羽純と距離近かった?」
苦笑いを見せる俺に、敦弘も苦笑い。
「…自覚なし。」
友香里に至っては呆れたように目を細めて口を尖らせ白い目で俺を見る。
「細かい話で言うとさ…前に羽純が語学で課題がわからない時とか食堂で教えてあげててさ、隣同士で仲良く座って、一生懸命にやってる羽純に教えながら、楽しそうにちょっかい出してさ…。羽純がそれに反応するとまあ、嬉しそうにしてて。授業も毎回隣に自ら座ってるし。」
「…それ、別に他の人にも困ってたらするけど。」
「私にはしないじゃん!」
「や、だって友香里はする必要ないし…あんまり困ってる時なくない?」
「あるよ、私にだって!気がつかないだけでしょ?羽純の困ってる事はすぐ気がつくじゃん。」
「まあ…そうだよね。ただ、羽純を助けるって所では、友香里もだと思うけど。」
敦弘がまた俺と友香里のやりとりに割って入った。そんな敦弘を二人して見たら苦笑い。
「あ〜…まあさ。こっからは俺の印象だから、聞き流して貰えるとありがたいんだけど。」
そう言って、コーヒーを一口飲んでから、また口を開いた。
「羽純って…さ。二人に助けて貰いたいんだろうなって感じがね…。」
歯切れの悪い敦弘の言い草に友香里と二人して首を傾げる。
「…連れてくれば良かったな、圭人も。」
そう言って、「待って」とスマホを取り出すと、圭人に連絡をしだす敦弘。
「あーもしもし、圭人?今時間ある?今、ヒロと友香里と居るんだけど、ちょっとさ…羽純の話になってて。良い機会だから、ちょっとだけ参加してもらっていい?」
そう言うと、スピーカーにして、スマホをテーブルに置いた。
『もしもし?ヒロ、友香里?』
「圭人、やっほー!」
友香里がいつもの明るい声に戻って、「圭人も来なよ!」と誘う。
『今日、これから用事あるから無理だけど、ちょっとなら話せるから。』
「ありがと、圭人。ごめん。」
『ああ、ヒロ?うん、まあ…俺と敦弘、お前と話すタイミング狙ってたトコがあったからさ。敦弘の言う通り良い機会かも。』
「どう言うこと?」
俺が聞くと、敦弘がスマホに体を寄せる。
「や…だからさ。羽純は無意識なのかもしれないけど、ヒロや友香里の前では結構『困ってます』『できません』オーラを出してんなーって印象でさ。俺といる時とか、圭人といる時って、そんなに手助け、口出ししなくても、羽純ってしっかりしてるし、自分で行動してるって思うんだよね。隣に頼れる人が居ると、甘えるって性格なのかもしれないよね」
『だってさ、あいつMT一回も落ちる事なく取れたんだよ?ヒロと友香里はすごいじゃん!て大絶賛してたけど、俺と敦弘からしてみたら、その位は羽純にとっては普通じゃね?って。』
そう…なんだ。
羽純って、何しても上手くいかなくて、もたついているって俺の中ではそんな感じだったんだけど…。
「でもさ、実際、羽純は特にヒロの事で最近悩んでばっかだったよ?私はよく相談されてたし。ヒロ自身に何かをズバって言うことができないって…」
『友香里、ヒロ関連以外の事で、羽純を助けたことある?』
圭人にそう言われて、友香里は「そりゃある…」と考えだして、フリーズ。
「…あれ。あんま無いかも。忘れてるだけかもしれないけど、思い出せない程度にしか無いかも。」
『だろ?多分ね、羽純は友香里にヒロに関しては助けて欲しくて話してるし、ちょっと…申し訳ない言い方すれば、助けてくれるって期待が含まれてると思う。俺らは一切ヒロのそう言うのに関わらないってわかってるからか、羽純、俺達の前でほとんどヒロの話自体しないし。』
「え?!そうなの?!」
友香里は目を見開いて驚いてから、「えー…そっかあ…」と背もたれにもたれて若干項垂れる。
「…私、羽純に利用されたってこと?っていうか、ヒロも面倒見の良い所を突かれたってこと?」
『まあ…ヒロに関しては、好きになったんだから、なるべくそばに居たくてそうしてたってのはあるんじゃん?
ヒロには悪いけど、俺は羽純に味方してる所があるかな。マジで俺ら思ってたからね“ヒロは羽純が好きだ”って。
彼女が居るって聞いた時、めちゃくちゃ驚いたわ。』
圭人の話に、敦弘も「だよな」と相槌を打ってからまた口を開く。
「それで、一回、羽純の事どうすんだって話をしたかったんだよね。側から見てて、どう考えても、ヒロはヒナちゃんと別れるってなさそうだから、このままだとあまりにも羽純が酷だって思ってさ。
だけど…友香里に関しては、利用とかってことでは無いでしょ。信頼してるからこそ、話したんだと思うし…実際、行動に移してくれたって面では、羽純にとっては唯一の味方なんだから。」
「それだって、私が行動に移さなかったら、お役ごめんだってことじゃん。」
苦笑いの友香里に、スマホから圭人の優しい声が応答する。
『まあ…それはまた違うと思うけど、俺らが見てて。別に行動に移さないで、話を聞くだけでも、友香里と話すのは羽純にとっては気持ちが楽になったんじゃ無いかって思うし。』
「そっかな…。まあ、その事実を知っても私的には別に羽純を嫌いになるとかって話では無いけど。」
そこまで話をした所で、圭人は『そろそろ時間だから』とスマホを切った。
スマホ画面に通話終了の文字が出たのを確認し、敦弘が手にとり自分の鞄にしまう。
「…友香里、これで分かった?ヒナちゃんにしたことが如何にダメだったか。」
「そ、それは…」
「ヒロはヒロで反省すべきことがあると思うけど、だからと言って、矛先をヒナちゃんに向けて嫌がらせみたいな事をするのは違うよね。分かってたでしょ?ヒナちゃんが言われて傷つくって。」
敦弘の言葉に、バツの悪そうな表情になった友香里は、俺を見て、口を尖らせ少し息を吐いた。
「…ごめん、ヒロ。というか、ヒナちゃん、ごめんなさい…だよね。
…どっちかって言うと、ヒナちゃんはヒロに囲われた、哀れな被害者だったのに。」
「「おい。」」
俺と敦弘同時にツッコミを入れると、友香里は苦笑い。
「自分が羽純に踊らされてたって事も含めてさ。結構今、自分のやってた事に対して反省してる。ヒロとヒナちゃんの関係もよく知らないくせに、自分の先入観で色々本人達に言ってね。まあ、言い訳すれば、羽純のため!って思いが強かった…っていうか、それが100%になってて、冷静じゃなかったって事なんだけどさ。
さっきも言ったけど、それが分かってもやっぱり羽純の事は相変わらず好きだけどね。別にヒロの事だけしか羽純とやりとりしてなかったわけじゃないし。それ以外の事でも羽純とは色々楽しくやってきたし。でも…反省してる今、もう羽純には協力してあげられないって思うから。もしかしたら、羽純は私から離れていっちゃうかもね。」
「そんなことは無いんじゃない?圭人もさっき言ってたけど、協力してくれる人だからってだけで一緒に居たわけじゃ無いでしょ。」
「だと良いけどね。それより、ヒロ…」
「何?」
「ヒナちゃんに直接は今は会わない方が良いと思うから、まずは伝えておいて。ごめんなさいって。」
「りょーかい。」
「あと、ヒロも、きっと私にムカついてるだろうから、許せる時が来るまではムカついてもらっていいよ。私は…今後はちゃんと反省したって、行動で示す方法を模索していくから。」
こう言うところが、まっすぐな友香里らしいよな。
自分で納得すると、見栄とかプライドとかよりも、素直に自分の否を認める。
「…いや、俺としては、友香里の今の言葉でだいぶ気が済んだけど。」
「はっ?!何その、ダメな優しさ!そんなすぐ人の事許しちゃダメだって、ヒロ!」
「何で、許す側の俺が許される側に説教されてんだよ…」
もちろん、友香里がしてきたことは、ヒナを傷つけたから、そこは俺も許せない部分はある。
でもさ、友香里の態度を見ていて、今後ヒナに危害を加えることはないだろうって、信じられるから。
後は…羽純だな。
俺が思っている事が、分かったのかどうかは定かじゃない。けれど、友香里が、水を一口飲んでから、また俺をまっすぐに見て口を開いた。
「…私がこんな事言えた義理じゃないけど、羽純の事、ちゃんとしてあげて欲しいかも。ヒロに気がないならあの子がそれをわかるまでちゃんと話してあげて欲しい。それが…ヒナちゃんを守る事でもあると思うし。」
「うん…そもそも俺の言動が事の発端だってものすごく俺も反省中。
それに昨日、変なふうに羽純に悪態ついちゃったし。そこも謝らないと」
「はっ?!悪態?!どうしてそう言うことするかな…。可哀想じゃん!羽純が!というか、それによってヒナちゃんにだって迷惑かかるかもしれないわけでしょ?
ヒロ、もう少し人との距離感覚えた方がいいよ。
羽純に対してヤサ甘いと激怒の両極端になっちゃってんじゃん…。」
「それな。俺も大いに思う。ヒロ、頑張れ。」
敦弘が深くうなづいて同意すると、友香里は穏やかに俺を見る。
「ヒロがはっきりと言った後の事はさ、私達がちゃんとフォローするから。ね!敦弘!」
「おう。まあな。友香里できんの?」
「はあ?!最悪!敦弘!」
二人で戯れ始めたのをクッと含み笑いをする。
ありがとう…敦弘、圭人も。
友香里と二人きりで話していたら、ここまで話がうまくいかなかったかもしれない。
話しづらかったと思うけど、俺のダメな所も言ってくれて。
俺も色々と自分の悪い所や直さなきゃいけない所を知ることができた。
やっぱり友達ってすごいよね。
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