Simple-Lover

三つ年上のヒロにぃは、何かとうちに入り浸る、幼馴染みのお兄ちゃんだ。


何故か、うちに来て、お夕飯を食べたり、お風呂に入ったり。


私の面倒もよくみてくれていたから、お父さんとお母さんもヒロにぃには信頼を寄せているし、可愛がっている。


私は…そりゃ、少し口は悪いけどいつでも優しくて構ってくれるかっこいいお兄ちゃんを嫌いなわけはない。

私が生まれた頃からずっと一緒のヒロにい。
まん丸大きめな二重の目で、笑うとぽこんとエクボが出来るちょっと大きめの口。少し面長な輪郭。
いたずらっ子みたいな愛嬌ある笑顔が柔らかいのは昔から。
口角をキュッとあげて優しく笑いかけられると、それだけで嬉しくて舞い上がる私も昔から。

歳を重ねるごとに、身長も伸びて、見上げるくらいになっていって。
頭も良いし、スポーツも良くできて…高校生位から、髪型も今時になって(大学生の今はツーブロックマッシュで癖っ毛の髪をふんわりさせて、前髪厚めにしてる)制服を少し着崩したり、私服がオシャレになったり。

そんな風にどんどんかっこよくなるヒロにいに、私はどんどん意識をするようになって、最近は一緒にいるとドキドキして嬉しくて、どうしていいかわからなくなるくらい、大変。


…だけど。

いくら一緒にいた所でヒロにぃは私には指一本触れない。

私だって、もう高校2年生。
肩下位の髪も、毎日トリートメントして、ストレートのサラサラな髪をキープしているし。前髪もちゃんと巻いて少し丸まり気味にして自分の目が大きく見えるようにしたり、お肌のお手入れもしてニキビのないもちもち肌をキープしたり。太らないように、筋トレしたり走ったり、体型にも気を遣う。(身長が160cm位だから、足の長さは無いけど)
それなりに見た目を気にして、可愛くしているつもりなのに。

長い時間を一緒に過ごしていても、頭を撫でること位しか、してくれない。


いや…寧ろ、小さい頃は、公園に一緒に行く時とか、行き帰り手を繋いでくれていたから、退化してない?


なんて、最近は思う。


ヒロにいは、小学生の高学年の頃位からモテ始めて。卒業式の時には、一緒に写真を撮りたい人(女子だけじゃなく男子も居たのがヒロにいの凄い所)が長蛇の列をなして驚いたとヒロにいのお母さんから聞いた。

中学生位から、彼女も出来て…色々な人と付き合って。一緒にいるところを見かけたこともあった。どの人も綺麗な人、可愛いなって思える人。
けれど、あまり長続きはしなかったみたいで、うちに来た時に「彼女はいいの?」って聞くと「…別に。」って不機嫌そうに答えて終わり。
『中学生は付き合っても数週間、高校生は数ヶ月』なんて言われているこのご時世、そんなもんなのかなと思ってたし…彼女が出来てもうちに遊びに来る頻度はあまり変わらなかった気がする。

それはそれで、私は嬉しかったけど、『ヒロにぃにとっては、私はただの妹みたいな幼馴染みと言うのは普遍なのかもしれない。』と思うと、気持ちがズキンと痛みを覚えて、最近はちょっと苦しくなっていた。