「あの時、美奈さんと笹岡さん付き合ってたの知ってた?」
「え!そうなの?!全然知らなかった!」
「付き合ってること知ってたの、ごく一部の人だけだったからなぁ。」
「仲良いとは思ってたけど、付き合ってたなんて、、、」

わたしはあの頃を思い出すように宙のどこでもないところを見上げ、ほろ◯いを1缶空けた。

「そういえば、俺らよく一緒に帰ってたよな。」
「そうだね。同じ方向のバスだったからね。」
「懐かしいなぁ、、、」

そう言って、2缶目のレモンハイを飲む柊司くん。

わたしは柿ピーの中のピーナッツを食べると、「懐かしいよね。」と柊司くんの言葉に応えるように言った。

「俺さぁ、今だから言うけど、、、あの時、恵麻のこと好きだったんだ。」

突然の柊司くんの言葉に「えっ?」とフリーズしてしまうわたし。

柊司くんが、、、わたしを好きだった?

「いつも一生懸命でさ、接客も丁寧で、みんなにも好かれてたじゃん。特に橋本さんに。」
「やめてよぉ、橋本さんの話は。」

わたしが苦笑いを浮かべそう言うと、柊司くんは悪戯な表情をして笑った。

橋本さんとは10歳年上のキッチン担当の先輩で、わたしは橋本さんに告白されたことがあったのだ。

「俺さぁ、恵麻が就職で先にバイト辞めた時、後悔したんだ。何で気持ちを伝えておかなかったんだろうって。フラレたとしても、伝えれば良かったって。ずっと、、、恵麻のことが忘れられなかったから。」

柊司くんは切なげにそう言った後、「それなら告白して、スパッとフラレておいた方がスッキリしたのにな!」と笑って見せたのだった。