環は持ってきた百合の花を墓前に供えようとした。 そしてすでに供えられていた花を見て、ハッとした。 このブルーの花束には見覚えがあった。 それは友恵と最初で最後の恋の話をしたときに、花瓶に生けられていたブルースターの花束だった。 もしかしてその花束を見舞いに持ってきた人が、友恵の恋する誰かだったのかもしれない。 そして、それとともに自分に課した誓いを再度思い出す。 私は生涯恋愛しない。 友恵が出来なかった恋愛を自分がすることを、酷い裏切り行為のように感じてしまうのだ。