深く頭を下げる環に、葉山は記憶がぶり返したようで、強い口調で怒りを露わにした。
「俺は当たり前のことをしただけです。貴女を傷つけるような言動を俺は絶対に許さない。」
「・・・・・・。」
いくら鈍感な環でもここまでされると、こう思わざるを得なかった。
自分は葉山に、女として好意を持たれているのではないか、と。
しかし環の心にひとつだけ傷を残した寺島夫人の言葉があった。
葉山に貢いでもらえばいい・・・そんな風に思われるのは心外だった。
葉山の好意に甘え、その渦に巻き込まれてしまいたい気持ちが日に日に強くなる。
けれど・・・環の中の固い蕾がその花びらをどうしても開かせないのだった。



