「立ち入ったことをお伺いしてもいいですか?」
「・・・はい。」
「環さんはどのようなお仕事を?」
「フラワーショップでアルバイトをしています。」
「そのフラワーショップはどちらにある店ですか?」
「・・・・・・?」
なぜそんなことを聞くのか首を傾げていると、葉山は照れくさそうに微笑んだ。
「仕事柄、花瓶に花を生けることが多いんです。」
「・・・そうなんですね。」
もしかしたら奥さんか彼女に花束を贈る予定があるのかもしれない、と環は思った。
葉山の左薬指に指輪はないが、仕事中に指輪を外す男性は少なくないと聞いたことがある。
「ここから10分ほど歩いたところにある『whitebird』という花屋です。もし何かご入り用であればいつでもいらしてください。」
「ご近所に職場があるんですね。一分でも長く寝ていたい僕からすると羨ましいです。」
「はい。」
葉山の軽口に環も小さく笑った。



