寺島家は思っていたより大きな家、言葉を変えるならば豪邸だった。
敷地の周りには高い塀があり、門を入ると広い庭があった。
寺島家にはどんな手を使ったのか、葉山が訪問の約束を取り付けてくれていた。
インターホンを鳴らすと、ただ一言だけ「どうぞ」という女性の声で返答があった。
待つこと5分、扉は突然開き、メイドとおぼしき女性が慇懃に言った。
「おあがりください。奥様がお待ちです。」
メイドの後を付いていくと、長い廊下の奥に広いリビングがあり、革張りの応接セットがしつらえてあった。
そのソファに黒いベロアのロングワンピースを着た熟年女性が座っている。
環と葉山を見ても無表情なまま、ただ小さく首を動かした。
どうやら座れ、という意思表示らしく、ふたりはソファに腰を下ろした。



