しんみりとした空気を変えようと、環は明るく尋ねた。
「葉山さんは兄と同じ高校だったんですよね。兄はどんな生徒でしたか?」
家での太一は、どちらかというと寡黙で陽気なほうではなかった。
けれど環にとってはたった一人の家族であり優しい兄だった。
ただふとした瞬間深く考え込んだ表情をして、環に何かを隠しているように感じることも多々あった。
葉山は少し考えるように間を置き、その後斜め右上に視線を向け、話し始めた。
「そうですね・・・そんなに目立つタイプではなかったけれど、いざというときには頼りになる優しくていい奴でした。俺も稲沢君には色々世話になりました。ノートを写させてもらったり・・・・。」
「そうだったんですね。」



