葉山は女将と目を合わせ会釈し、店内を見渡した。
「環さんの口に合うと良いのですが。」
「私の数少ない長所は食べものの好き嫌いがないことなんです。何でも美味しく頂きます。」
「環さんは謙虚ですね。貴女の長所はそれだけではないことを俺は知っています。」
「・・・・・・。」
まだ出会ってまもない葉山にそんなことを言われるのは面映ゆかったが、環は素直に嬉しく思った。
店内はいたって静かで、熟年の夫婦らしい男女の客が一組いるだけだった。
白木のテーブル席に向かい合って座る。
「俺のおすすめコースでいいですか?」
「もちろんです。」



