環は葉山のことを決して嫌ってなどいない。
背が高く均整がとれた身体に涼やかな目元が際立つ葉山のルックスは、女性社員皆が憧れるものではあるが、それよりも内面からにじみ出る人に対しての誠実さ、細やかなところに配慮出来る繊細さ、そして情熱を持って仕事に徹するという人間性に好意を抱いている。
誰に対しても敬意を払い、決して社長という立場に驕り高ぶらない葉山を尊敬している。
ミスをして落ち込んでいるスタッフにはさりげない励ましの言葉をかけ、高飛車な接客をするスタッフには厳しく正す。
けれどその後のフォローは忘れない。
そんな葉山に社員やスタッフは皆、付いていこうと思うのだ。
だからこそ、余計な感情を葉山に対して持つべきではないと環は考えていた。
葉山は環を大切な友人の妹だから気を配ってくれているのだ、と。
