葉山の言葉に環の心は乱れた。
けれど恋愛経験のない環は、そんな言葉を聞かされてもどう反応したら良いかわからなかった。
ましてやここは酒を飲み、疑似恋愛を楽しむ場だ。
客の言葉をまともにとってはいけない、というママの教えを思い出し、環はにこりと笑ってこう答えた。
「葉山さん。お上手ですね。そんな言葉で何人の女性を泣かせてきたのですか?」
「環さんこそ、いつの間にそんなそつのない模範解答を憶えたのですか?これ以上貴女を水商売で働かせたくないという気持ちがいっそう強まりました。」
環はそう告げる葉山の瞳に、嘘や冗談の影を見つけることが出来なかった。



