甘い物は嫌いじゃないし、そこまで言われたら食べないわけにもいかず、俺はそのクッキーを口に入れた。
それはバターと砂糖のさじ加減が絶妙な、食べたことのないような美味しいクッキーだった。
「旨い・・・」
「でしょ?いっぱいあるから食べてね。」
俺は図々しくもさらに3つ、そのクッキーを食してしまった。
「その・・・稲沢さんって子、お菓子作りが上手なんだな。料理部かなにかに入っているのか?」
「ううん。なんか家で色々家事をやっているみたい。」
環が両親を早くに亡くし、親戚の家で暮らしていたことを知るのはずっと先のことで、このときの俺は親が共働きかなにかで、家の手伝いをしているのだろうか、と思っていた。



