「手術の前の日、俺はただ呆然と休憩室の椅子に座り、空を見上げていました。するといつもそっと遠くから見ているだけだった環さんが俺の隣に座ったんです。そして俺に言いました。空が綺麗ですね、と。」
環の記憶の中の何かが刺激された。
「その時俺は初めて気づいたんです。ああ、本当に空が綺麗だな、俺はまだ生きているのに何も見ようとしていなかったんだなと・・・。すると環さんは持っていた淡いピンクの花束を俺にくれました。そして言いました。私の友達も貴方のような顔をたまにします。私はそれを見るとすごく悲しいんです。でも友達は花を見ると少し元気になるようです。だから貴方にも・・・どうぞ・・・と。
その瞬間、俺は完全に恋に落ちました。いや、環さんを目で追っている頃から、すでに貴女に恋していたのかもしれない。」



