「稲沢環です。よろしくお願いします。」
すると小出の頭を葉山は軽くはたいた。
「おい。環さんに軽々しくちゃん付けするな。手にも触れるな。」
「おーコワ!こじらせ男を怒らせちゃったかな?それに知り合いってなに?僕は斎君のこと親友だと思ってるんだけど。」
「誰が親友だ。お前なんか知り合いで十分だ。」
そういいつつ葉山の小出に対する態度で、二人の親密度が環にも伝わってきた。
「そこの可愛いおねえさーん。僕にも生ビールひとつよろしく!」
近くにいた店のスタッフに小出は大声で叫んだ。
どうやら小出にとっての可愛いという言葉は、女性に対する枕詞のようなものらしい。



