線香をあげ、香典を差し出したあと、真奈美は高校時代の思い出を面白おかしく話し始めた。
真奈美は高校の国語の教師をしているだけあって話し上手で、聞き役に徹すれば良い環にはありがたい客だった。
「太一君はけっこうモテていたんですよ。女子に。」
真奈美はとっておきの話をする時のように、意味深な顔で微笑んだ。
「え・・・?そうなんですか?」
環にとっては初耳だった。
葉山からもそんな話は聞いたことがない。
それとも葉山はそういったプライバシーを明かさない方が良いと思ったのだろうか?
「そうですよ。イケメンだし優しいし、告白されたことも一度や二度ではないんじゃないかな?」
「兄は私にはそういった話は一言も教えてくれなかったんです。」



