みやびの言葉に環はこう考えざるを得なかった。 兄太一と寺島勇次は友人以上の特別な関係だったのではないか、と。 みやびは手首に巻いたカルティエの腕時計をみて、大きくため息をついた。 「これくらいでいいかしら。元婚約者といっても、私勇次さんのこと何も知らないと同じなの。」 「はい。お忙しい中、本当にありがとうございました。」 環が頭を下げると、みやびは悠然と微笑んだ。