「千早、優しいから。わたしがこの学校離れたくないの知ってて、自分がお父さんに連いて行くって言い出したの」


「千早のこと止められなかった」とごしごし涙を拭いた。


記憶に映る小鳥遊くんは、いつだって優しくて温かくて。


小鳥遊くんと離れることがまだ理解できなくて、いつまでも記憶を巡っては、小鳥遊くんの姿を探してた。

私は壊れそうな心の欠片を拾って、ななせ先輩に聞く。苦しいけれど、これが私の今の精一杯。


「ななせ先輩。小鳥遊くんは…」

「駅にいるよ。わたしはお別れしてきた。千早、泣かなかった」

「…っ」

「今なら間に合うから…。千夏ちゃん、会って…千早に、お願い」


気がついたら、私は涙が溢れて止まらなくて、足が小鳥遊くんのいる方へ走ってた。


『さよなら』なんてやだよ。

私、まだ言えてないことたくさんあるのに。

バイバイなんて言わずに、先に行っちゃう小鳥遊くんは、ずるい。

私だけ好きなんて、ずるいよ──