涙声の沙耶佳ちゃんが続ける。


「最低だよね。こんなわたし、もう嫌だ……」


最後にぽつりと呟いて、消えそうな声が混じると、沙耶佳ちゃんは涙を何粒も落として、肩を震わせながら泣く。

ぎゅっ、と握った拳が強くなった。


「さ、やかちゃん。…私、沙耶佳ちゃんの想いを知らなくて、沙耶佳ちゃんの前で“小鳥遊くんが好き”って言って、辛かったよね。ごめんね」


沙耶佳ちゃんは一拍置いて、ふわりと優しく微笑んだ。


「そんなことないよ。昨日…告白してフラれたから。後悔なんてしてない」


そう言った沙耶佳ちゃんは眩しくて、きっと誰よりも泣きたいはずなのに涙の雨が止んでいた。

私は、ななせ先輩の気持ちがわかった気がする。


大切な友達と、同じ人を好きになることが、こんなにも胸が裂けそうなほど苦しいってことも、涙が止まらないくらい切ないことも。


だけど、気持ちを伝えたあと優しい温もりを覚えた──…