さよならの前に抱きしめて

「ごめんね。ちぃが、小鳥遊くんと仲良くなっていくのを、見る度に辛くなって、ななせ先輩とも仲良くなってたちぃに嫉妬してた…」


揺れる瞳から大粒の涙が溜まって、ぽろぽろと落ちてく。

目が腫れて、鼻を啜る沙耶佳ちゃんは今にも崩れ落ちそうなほど脆い。

それと同じで私も苦しくて、怖くて逃げ出しそうなくらいに、心が張り裂けそうで痛くて涙が頬を伝う。


沙耶佳ちゃんが、小鳥遊くんを好きなこと。

沙耶佳ちゃんの気持ちに気づけなかった自分がいたこと。

潰れそうな喉から、最初の文字をゆっくり、壊れてもいいから出した。

視線は沙耶佳ちゃんを真っ直ぐ捉えてる。


「私も一緒だよ…。あの日会った時ね、ほんとはすごく気になってヤキモチやいてたの。昨日だって…私の方こそ、ごめんね。沙耶佳ちゃんの気持ち、気づかなくて……ごめんなさい」

「ううん。謝ることないの。わたしの知らないところで、小鳥遊くんと仲良くしてることとか、二人で楽しく話してるのを見て…昨日わざと声かけちゃった。わたしの方が、ずっと前からすきだったのに、って思っちゃって、こんなのダメなのに」


落ち着いた声が前が降ってきて、私はただ黙って耳を傾けるだけ。


はじめて沙耶佳ちゃんの、ほんとの気持ちを知った。


はじめて私は…誰かを好きになる意味を知った──…