さよならの前に抱きしめて

「乙葉ちゃん、ごめん。先に帰ってて。また、ライン送るね!」

「うっ、うん。わかった〜。ちーちゃんも、沙耶佳ちゃんもまたね!バイバイ〜」


からん、と静寂を包んだ教室には私と沙耶佳ちゃんだけが残った。

どちらとも黙ったままで、聞こえるのは時計の秒針が動く音だけ。

それに合わせるように、私の鼓動も小刻みにリズムを崩してく。


息を吸っただけで苦しくて、心地悪い。

少し経ったとき、沙耶佳ちゃんがスカートの裾をぎゅっと握るのが、視界に入った。


「沙耶佳ちゃん、私ね……」

「ちぃ。わたしっ、も小鳥遊くんのことがすきだったの。中学の時からずっと」

「……っ」


中学の時から。
そうだ、言ってた。

沙耶佳ちゃんと同じ中学だって、小鳥遊くんが…。

だから私を避けてたのかな。

昨日、今日仲良くなった私が、小鳥遊くんのこと好きって言ったの聞いて、沙耶佳ちゃんどう思ったのかな?

きっといい気分じゃなかったよね。
私、サイテーだ。