さよならの前に抱きしめて

翌日の12月25日、ホワイトクリスマス。

雪が舞うその日の補習に、小鳥遊くんはいなかった。


たった1日会えないだけで、こんなにも寂しいなんて知らなかったよ。
来月になったら席替えもあるし嫌だなあ。


ぐるり、と周りを見渡しても小鳥遊くんがいない隣に、寂しさを感じてしまう。

短いと感じていた授業も今日は一段と長い。


苦手な英語の授業も、ちんぷんかんぷんで、先生に当てられても答えられなかったし。


早く明日にならないかな。
補習の最終日だし、小鳥遊くんと話したい。
いつもみたいに笑ってたくさん話したいな。


考えることも止めて、流れる時間を過ごすだけ。


気がついたら授業も終わっていて、クラスメイトたちは荷物をまとめたり、温かそうなマフラーを巻いて教室を後にする。

私も置いて行かれないように、教科書をリュックに詰めた。年明けにはテストもあるから、軽いリュックの中身が重たくなっていく。

下ばっかり見てたせいで気づいてなかったけど、ふわりと香水の匂いが真横から漂い、顔を上げた。


「ちぃ、今大丈夫?」

「沙耶佳ちゃん……」


二人の間に流れる重たい空気。私は、声が上擦って、掠れてしまった。


「あのね、小鳥遊くんのことなんだけど、」

「ちーちゃん、帰ろ〜〜」


黙り込む私に、沙耶佳ちゃんは眉尻を下げた。
と、乙葉ちゃんが朗らかな声と共にやって来て、沙耶佳ちゃんも黙ってしまう。