午前10時の窓際に近い場所は、日差しが暖かくて睡魔に襲われそうなほどだ。

冬休みの補習１日目は、眠気に負けて夢の中に落ちていく。

うつ伏せた肘下に隠れる進路希望の紙切れ。

希望する大学、専門学校、就職など将来の夢が散らばるそれに、なにを書き残したのか自分でも忘れるくらい、眠たいのだ。

外の光が眩しくて、うっすらと重たい瞼を開けたら、小鳥遊くんの姿が微かに見えた。

視線が合うと、自然と体が起き上がって眠っていた頭も動き始める。

軽く跳ねた前髪を直しながらも、少し伸びた前髪の隙間から小鳥遊くんが見えた。


「おはよう。結構寝てたね」

「おはよ（好きな人に寝顔を晒すなんて…恥ずかしい）」


笑った顔は、やっぱりずるいよ…。
また胸がキュンてした。

小鳥遊くんは知らないだろうな。私が、ずっとドキドキしてることも、小鳥遊くんのことが好きなことも。


「あ…。そうだ、職員室寄らなきゃいけないから、先に行ってて」


シャーペンを動かす指を止めて、私にこそっと伝える。

黒い瞳の中に私が映ってて、私の瞳には小鳥遊くんが映る。

返事をしない変わりに頷いた。