さよならの前に抱きしめて

「ありがとー…」


恥ずかしくなった私は俯き加減にお礼を伝えた。ふと、隣を見ると小鳥遊くんが優しく微笑んでいた。

宝石みたいに輝く瞳に捕まった。

小鳥遊くんの笑った顔も、甘い声も好き。胸が、きゅっとなるの。

だんだん熱さが増してくる体。

躊躇いがちに口を開けて、言葉を出すと、白い空気に紛れて吐く息が空と一緒に溶けてく。


「小鳥遊くんて、学校ではあんまり喋らないし、クールだと思ってた」

「ん…。俺も笑うよ。都倉さんといたら落ち着くし、なんか表情も緩む」


私が羨ましいと思っていた柔らかい髪が、冬風に揺れた。

小鳥遊くんの頬が、ほんのりと朱色に染まっていく様子が、目に留まった。

言葉を忘れて甘い空気に酔いしれる。


好きになるってこういうことなんだ。


そう思ったら、胸がニュアンスの違う音を立てて、心の奥から温かいものが溢れた。