はじめて生まれた感情に、戸惑い、胸が高鳴って。

ふいに向いた視線の先で、小鳥遊くんとぶつかると、ドキドキが止まらない。

お互いに見つめ合った瞳を、離さないし離そうとしない。気がついたら、小鳥遊くんが私の隣にしゃがんでいたの。

息が触れそうな距離に、甘い痺れを覚えた。


あ…。

小鳥遊くんも頬赤い。私と同じだ。



「…っ。たまたま会っただけ。別に最初から、会ってたわけじゃない。中学の同級生なんだよ、一緒にいたやつら」

「うん…」



ウソじゃない言葉が横から降ってくる。

魔法みたいに、黒い塊が一つずつ剥がれて、色を透明へと戻す。

小鳥遊くんが喋ると、私の心は落ち着いて、乱れかけた呼吸も、揺れる視界も、周りの音も、全部消える。


まるで、二人だけの世界みたいに。


最初から二人しかいなかったように…世界がほんの少しだけ違うように見えた。