一時間目が終わって数分後、教室の扉を開けると乙葉ちゃんが、心配そうな表情で私へ駆け寄ってくる。

沙耶佳ちゃんの姿はない。


「ちぃちゃん、体調大丈夫?」

「うん、平気。……沙耶佳ちゃんは?」

「さっき隣のクラスに行ってたよ」

「そっか…」



乙葉ちゃんの言葉で胸の重みが少し減った。下に落ちてた眉も自然と上を向いて。


沙耶佳ちゃんと会うの気まずいな。


小さく吐く息は、疲れや不安が混じって、騒がしい教室の音の中へ入ってく。


結局、沙耶佳ちゃんと話すことは今日一日なかった。