さよならの前に抱きしめて


「6時過ぎてたから、都倉さんもういないかと思って」

「全然へーき。」



私ね、その時間いたんだよ。

どうして来てくれなかったの──…?



私の中に沈む黒い塊は溶けてくれない。


小鳥遊くんの言葉を耳にするたびに大きく広がって、心に染みてく。



やだ。私このままじゃ、ほんとに嫌な子になっちゃう。

小鳥遊くんに嫌なこと言っちゃう…。



「それと──…」



小鳥遊くんがなにかを伝えようとした時、私は立ち上がって無視する形になった。



「ちーちゃん顔色悪いよ」

「…気分悪いから、保健室行ってくるね」



すたすた歩いて教室を出て行こうとしたら、来たばかりの心ちゃんが、心配そうに私の顔を伺う。


いつも通り笑って、へらへら明るい声で振る舞ったけど、ほんとは平気じゃない。


今にも心が折れそうで、弱くて、涙の雨が降りそう──…