さよならの前に抱きしめて

唇を噛んで小鳥遊くんへ、ゆらりと視線を移動した。

目は合っていないのに、小鳥遊くんが私の視界に入ると、胸が音を立てるんだ。

椅子を引いた音が隣から聞こえた。


「…昨日はごめん。約束したばっかなのに」

「気にしてないからいいよ。今まで私一人で世話してたし」


あ、どうしてこんな言い方するんだろ。可愛くない。


繋がる言葉はトゲが刺さったみたいに痛い。

そんなこと全然思ってないのに、意地悪な口調になってしまった。時間が戻ってほしいのに、取り返せない。

ちくちくして喉が焼けるように、痛くて、熱くて、心の中で何度も小鳥遊くんに謝った。

口で言いたくても、言ったらきっと泣いちゃいそうだから。


小鳥遊くんに泣き顔なんか見せれないよ。